子供に読み聞かせをするのに、何かスーパーマン的なパワーを身につけて活躍するようなファンタジーがないかなと探していた時に見つけた絵本がこの「おばあちゃんのあかいマント」だった。だってマントだったし、それにその組み合わせにおばあちゃんだったらきっと何かあるかも知れない、と思って読み進めると全くそういう話ではなく(笑)、違った次元で楽しめるお話だった。
大きな街にいるおばあちゃんを訪ねること
個人的な勝手なイメージとして、絵本になりやすいストーリーといえば都会の子が田舎の祖父母を訪ねて、自然の中での暮らしやら生活の仕方を体験するようなパターンかな、と思うんだけどこの絵本は真逆。大きな街に引っ越して行ったシティ派おばあちゃんのところに田舎から”ぼく”が尋ねる。それだけでなんだか斬新。
”ぼく”がおばあちゃんの街に到着した日は、その知らない世界を怖がる。なんでおばあちゃんはこんな騒がしいところに住んでいるんだろうと訝しがる。その様子を見てか、おばあちゃんが手作りマントを作ってくれた。明日からそれをつけておばあちゃんと街を探検してみよう!
新しい場所や知らないものに対して、なんとなく苦手意識や怖い気持ちを持つことって多くの人にとってはよくあることだと思う。でもちょっとだけ勇気を出せば、それができたり、そこまで気にしなくてもよかったなと思えたり。マントがそのほんのちょっと背中を押してくれるアイテムになって頑張れたんだろうな。なんかわかるなこの気持ち。
ぼくにとってマントとは?
”ぼく”がおばあちゃんとバイバイするとき、作ってもらったマントをおばあちゃんにつけてあげて帰っていく。この行動の意味がどんなものなのか、「せっかくもらったのに」どうしてなんだろうか。もらったものを返してしまうことと、あげることは違うのか?結構考えることがあるなぁと思った。なぜおばあちゃんにあげたんだろうかと子供達に問いかけてみた。もちろん答えなんかないと思う。
「好きだからあげた」「お気に入りだからあげた」「田舎に帰るからあげた」とか色々な意見があると思う。いろんなことを考えて、お話ししていく中で言語化する力みたいなのが育っていくんじゃないかなと思う。もらったものを返してしまうことは、大人都合の考え方だと失礼なことかも知れないななんて一瞬思ったんだけど、そんな意図はあるはずもなく、僕も改めて子供の純粋な世界を味わっていた。
僕の両親も大きい街に住んでいて、我が家も以前同じ街に住んでいた。今は僕ら夫婦は家庭菜園をできるような田舎に引っ越してきているので、シチュエーションとしては祖父母が都会、子供らが田舎ということで、この本と似たような状況だ。我が子からしたらイメージを重ねやすかったかも知れないな。この日はその母の誕生日だったので読んでやりたかったのもある。
分からないから恐れていたこと、知れば理解できて好きにもなることがある事を学ぶ
ということで、スーパーヒーロー的な話では全くなかったんだけど(笑)、勇気をもつきっかけはほんの小さなおまじないでもいいんだと思わせてくれる、素敵な本だったなと思う。最初は知らなくて怖がっていた街を見て回って、おばあちゃんの引っ越した理由や街の魅力を理解して、勇気をくれたマントは持って帰るでもなく大好きなおばあちゃんにあげる。主人公のぼうやがこの短い絵本のストーリーの間に成長していく様が愛おしく思えた。
絵本情報
出典(書名: あばあちゃんのあかいマント、作者名:ローレン・カスティーヨ 訳:たが きょうこ 出版社名:ほるぷ出版)
クレヨンと絵の具で書かれたようなやわらかいイラストタッチの絵。Lauren Castillo さんという作者の絵本で、ホームページにいくと雰囲気がよくわかってきっと気にいると思う。ねこやハリネズミの絵本もあるようでかわいい。ホームページに行ってみてようやくわかった。もともとタイトルにはマントなんて入っておらず「Nana in the City」というタイトル。つまり「街のおばあちゃん」だ。(※nanaというのは子供言葉でおばあちゃんのこと)スーパーヒーロー要素なし(笑)。でも訳本につけられたこのマント付きのタイトルのおかげで僕はこの本が気になったんだし、狙い通り機能している優秀なタイトルだね(笑)。
さて、ホームページは重たくてなかなか繋がらなかったけど、Instagramもやっているようだった。
この絵本はコールデコット賞という権威ある賞を受賞している作品だった。コールデコット賞というのは歴史が長くて、過去の受賞作の中に今まで読んだことのある「走れ!機関車」もあった。何らかの賞を軸にして絵本を探していくのも楽しいだろうな。
さて、こちらの投稿はこの絵本の続編だろうか。Nana in the countryということで、今度はいなかにきたおばあちゃんの話かな。アトリエからの投稿のようだった。素敵な作家さんのアトリエだ。これからもちょっと注目していきたいな。
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